甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)の患者さんが歯科治療を受ける際、最も重要なのは「甲状腺ホルモンのコントロール状態(主治医によるコントロールが良好かどうか)」です。コントロールが十分でない状態での刺激やストレスは、重篤な全身症状を引き起こすリスクがあります。歯科治療における主な注意点局所麻酔薬の選択(アドレナリンへの配慮)甲状腺機能亢進症では交感神経が優位になり、頻脈や高血圧を起こしやすくなっています。通常の歯科用麻酔に含まれる血管収縮薬(エピネフリン/アドレナリン)が心臓に過度な負担をかける恐れがあるため、状態に応じてアドレナリン非配合の麻酔薬(フェリプレシン配合プロピトカインなど)を選択します。甲状腺危機(Thyroid storm)の予防未治療やコントロール不良の状態で強い外科的刺激(抜歯など)、重度の感染、著しい精神的ストレスが加わると、高熱・頻脈・意識障害などを伴う致死的な「甲状腺危機」を誘発するリスクがあります。精神的ストレス・痛みの緩和緊張や痛み自体が交感神経を刺激するため、十分な痛みの管理と、リラックスできる環境での短時間診療が推奨されます。薬剤の相互作用および抗甲状腺薬の副作用への配慮抗甲状腺薬(メルカゾール、チウラジールなど)の副作用として「無顆粒球症(白血球の著減)」が生じることがあり、感染を起こしやすくなったり易出血性が高まったりする点に留意が必要です。コントロール状態による対応の違いコントロール状態歯科治療の可否・対応方針良好(コントロール下)通常通りの歯科治療が可能。麻酔薬や処方薬の選定に配慮しながら進行します。不良・未治療応急処置にとどめ、外科処置(抜歯等)は延期。内科主治医との提携(対向対診)を優先します。受付時やお問合せの際は、お薬手帳の提示とともに、直近の血液検査結果(FT3, FT4, TSHなどの値)や主治医の診断状況を歯科医師にお知らせいただくのが最もスムーズで安全です。